Corsair H100i 簡易水冷をしばく

■2013年8月16日

ようやく3機目の水冷PCが完成した。
これを機に、一時 避難用に購入していた簡易水冷をバラす。

主目的は分解のための購入であるが、
ここ数年の中でも目立って高性能と名高いCorsair社製 H100i をチョイス。

※俗に言う本格水冷側の立場から評している故、かなりの辛口をご了承下さい。

その1. 冷却性能と静音性

まずはcore i7-3930K 4.0GHz (Vcore 1.176V)での測定。
グリスは標準付属のものを使用。
計測ソフトは OCCT 4.4.0 アイドル1分を含む15分テスト。
室温は24度で維持。
ケースに組み込まない、いわゆるバラック状態である。

core #0 温度
2013-05-12-23h54-Temperature-Core #0
アイドル時で30度を切れず。
しかし、しばき中もコアはMAXでも51度。優秀。

CPU 温度

2013-05-12-23h54-Temperature-CPU
こちらがCPU温度。
アイドル時で28~29度。なかなか。
しばき中で48~51度。これは後述。

ソフトウェア上での温度計測はあくまで目安程度にしかならない。
そのため厳密なる数値でないことはご理解を。

Corsair H100i 001
気になったのはこのラジエター。
どう見てもアルミ製のこいつとファンの相性はよろしくない。
ファンがフル回転になるとファン音に加えて、フィンを通り抜けるすきま風が耳につく
これは私がプル(吸い出し)式ではなくプッシュ(送風)式で組んだのが要因かも知れない。
常用の運転では支障はきたさなかったと付け加えておく。
ちなみにラジエターはホース無しで約295g。銅製と比べ、はるかに軽い。
SATA電源ケーブルと同じコネクタを用いることで、電力不足に陥ることは皆無。
それが唯一最大のメリットと言える。
翻って言うならば、ポンプほどのチカラを要するパーツに、
ペリフェラル4pinやSATA電力ケーブルが用いられない、他の簡易水冷の作りの雑さに閉口する。
実際の使用感はここまで。

この間、約半年。
4.0~4.7GHzにOCした3930Kのお供として使用したのち、分解。

その2. 分解レビュー

難易度は5段階にしてLV.2
ニッパー、ドライヤー、クーラント液を受け取る容器があれば可。

1.ネジを外し水枕をほふる
Corsair H100i 002
銅板の水枕部。
ここの8カ所のネジを外すだけで水枕は取れる。
2.クーラント液をダイレクトキャッチ!
Corsair H100i 003
ご覧の通り、8カ所のネジを外すと同時にクーラント液がドポドポと。
ガマンできずに漏れる様を、便器で素早くキャッチすべし。
銅板の端をひっかけば、すぽりと取れます。
※クーラント液は有毒です。手についた場合は石鹸でキレイに洗い流すべし
3.チューブをほふる
Corsair H100i 004
赤い矢印、チューブクランプの役割を果たすシュリンクをニッパーで斬る。
伸縮するため簡単に斬れる。
ただしチューブそのものはとてつもなく硬く入りこんでいるため、ドライヤーで暖めてゆっくりと外すこと。
ポンプ側から生えているフィッティングの根本がプラスチック製なので折れそうになる。
4.内部を洗浄
Corsair H100i 005
左:水漏れ防止用のOリングがポンプ側に付いている。
中央:銅版の水路は非常に簡素で浅い。これはただでさえ少ない流量の、更なる圧損を防ぐ意図かと。
右:ポンプと水枕の間にかましてあったシリコン製の水路補正
ちなみにOリングの設置部分、銅版側に幾分か腐食・汚れの形跡が見える。
5年保証を謳う品質のわりに、わずか半年で傾向がみられる。
5.クーラント液の廃棄は100倍以上に薄めてから…
Corsair H100i 006
見事なまでにサラサラで薄い着色。
おそらくだが70%が精製水では?
でなければ後述の貧弱ポンプで、ここまでは冷やせない。

以下、補記。

6.ポンプをほふる
Corsair H100i 007
印2カ所のネジを外すだけ。
Corsair H100i 008
内部の基板は4カ所で固定されているので、これも外す。
中央の白い板はLED版。
基板裏と銅線で繋がっているので基板外す=LED断線となりやすい。
Corsair H100i 009
基板を外したところ。
見事にLEDに繋がる銅線は切れたが、ポンプご開帳。
こいつは手ですっぽり取れます。
Corsair H100i 010
で、ポンプを外した所がこちら。
中央のフィン状の円盤で水を掻き出す。
このフィンを通常インペラーと言うが、ペラペラ。なんだこれは。
インペラーは更に土台であるハウジングから取り外せる。
ここに腐食や汚れは見あたらず。

ここまで分解して感じたのは、接合部がやけに頑丈であること。

特にゴムホースとのフィットは抜群で、そう簡単には漏水しないはず。

気になるのは「全てにおいて貧弱極まりないパーツ群」。
渦巻きタイプのポンプは薄く小さく、銅板の水路も至って単純。
流量や揚程など、これっぽっちも考えていないのでは、と思える。

その分、全ての水路が細ければ、水の流れは安定しやすいが・・・

7.水路を見てみる
どこからどう見てもゴム製チューブ。
O/D (外径) は14.54mm
Corsair H100i 012
で、ゴム厚が3.34mm
ここから算出すると、I/D (内径)はおよそ7.86mm
Corsair H100i 013
フィッティングの最厚部は10.68mm
Corsair H100i 014
フィッティングのI/Dは5.04mm

分解はここまで。

3.総括

以下、まとめ。

1.水路 通常、水冷で使われるフィッティングはG1/4 (2分と読む)が主流。
最細部で直径6.35mm。
それと比較して、水路は総じて「細い」の一言。
流量が稼げない故、DIYでチューブを太くしても無意味。
フィッティングの内径も細い。
2.ポンプ 水冷でメジャーなLung社のポンプは最大流量1000L/時、
揚程3m以上のポンプで冷却水を送る。
ポンプそのものも耐用温度60度と公表されている。
それに対して簡易水冷ではポンプの仕様諸元が全て非公表
大半は魚の観賞用ポンプの流用で、その耐用温度は35~40度。
ラジエターで冷やしきれず温水がポンプに還れば死ぬ恐れあり。
3.ラジエター 何よりもアルミ製である時点でアウト。
銅枕を謳う製品が増えているが、電蝕を招く。
最悪ラジエターに穴が開く。
溶けた金属は冷却水に混じり、放熱効果を鈍らせる。
24時間フル稼働では危険か。

※以下、批評部分を対案形式に修正しました。

冷却水の品質とラジエターの冷却性能、耐用温度が水冷の重要項目と考える。

近年の「グリスCPUかつ昇圧OC」において簡易水冷は御法度と結論づける。
i7-3700以降、Intel社のデスクトップ用CPUは空冷OC 70~80度を平気で叩き出す。
それを簡易水冷で冷やすとなると、真っ先にポンプに危険が及ぶ。
(ただしi7-3900シリーズを除く)

決して人に勧められる代物ではない。

1.OCしない&メモリもノーマル
サイドフロー式空冷で充分。
夏場のCPU温度が60~70度以下を目安に。

2.OCはしない&メモリが背高
そもそもなぜ背高メモリを選ぶ?
その答えが「巨大ヒートシンクメモリ+簡易水冷がかっこよかったから」というなら止めません。
大賛成です。
しかし実用を考えるならば、メモリを代えるのも一計。
もしくはせっかくなので自作水冷に挑戦してみてはいかがか。

120mmファン1発ものの簡易水冷をケース後方排気、かつメモリ空冷ファンという組み合わせもある。
240mmファン2発タイプのラジエターファンでメモリ周辺を冷やそうなどと考えない方が良い。

3.プチOC & 背高メモリもOC
簡易水冷で組みつつ、温度や見栄えに不満が出てくれば自作水冷へのチャレンジ。

4.電圧盛りOC & メモリが背高
自作水冷へ

巷で最高峰と謳われるH100i。
昇圧OC下で常用するには空恐ろしい、残念ながら15点

利点は、頑丈すぎる締め付けゆえ水漏れの心配が少ない点か。
が、それを加味しても水質悪化の危険性を周知したい。

保証5年といえど、保証するのはこの冷却装置であって、漏水したマザボやグラボは自己責任。

対案を示すならば、ZALMAN社製Reserator 3 Max
詳しいレビューはエルミタをご参考に。
ラジエターまで銅製であるのは、これくらいか?

あとがき

簡易水冷しか選択肢がない!というならばそれまで。
死亡を想定して空冷クーラーを常備しておくことを勧める。

自作水冷、オール銅製であっても冷却水は1~3年で交換せねばならない。
銅+アルミの異種金属、しかもこの貧弱ポンプでそれ以上の使用は期待しないほうが良い。

ポンプから異音がすれば、モーターが死にかけている予兆かもしれない。